ときどき、理由もなく心がざわついたり胸が重くなることがあります。
イライラ、寂しさ、不安。
がんばって前を向こうとしても、からだの奥で波が立つ。
その感覚、無理に消そうとしなくて大丈夫です。
今日は、その波と静かに仲直りするための方法をお話します。
宇宙とわたしのつながり
わたしたちが暮らす世界には、たくさんの「段差」があるように感じます。
成功と失敗、上と下、強さと弱さ。
いつもどこかで比べながら、自分の立ち位置を探してしまうものです。
けれど、川の水をすくったとき、一滴一滴に優劣はありません。
空を見上げても、その青さによって「ここからが高い」「ここからが低い」という境目はありません。
宇宙も同じです。
本当は、どこにも区切りなど存在しないのです。
ただ、わたしたちが理解しやすいように言うなら——
「いちばん深いところ」では、すべてがひとつに重なり合い、
「手前の層」では、いくつもの表情や次元に分かれて見える。
そして不思議なことに、わたしたち人間もまた、その姿を映し出しています。
体、感情、思考、魂。
それらは別々のように思えて、実はひとつのいのちの表現なのです。
感情のからだ——「心の層」という考え方
ここからは「感情のからだ」という言葉を使います。
聞き慣れないかもしれませんが、むずかしいものではありません。
これは「心の層」「感情の層」と言いかえることもできます。
私たちには、体があります。
そして考える頭があります。
そのあいだをつなぐのが「感情のからだ」です。
思考で生まれた考えは、この層を通して「感じるもの」に変わります。
そして体は、その感じるものを受け取り、ホルモンや反応として「感情」を体験します。
怒り、恐れ、ストレス、いらだち。
あるいは愛、やさしさ、希望、よろこび。
これらはすべて、感じるものが形になったものです。
大切なのは、感情は体の反応であり、感じるものはもっとひろい気づきだということ。
感じるものは体の外側にも広がり、わたしたちの世界の見え方をそっと染めています。
なぜ感情のからだに寄りそうのか
わたしたちの解釈、思い込み、そして過去の痛みの色は、この層にたまります。
もし「世界はつらい」と感じる結論を握りしめていると、その感じが体に伝わり、日常に同じ絵がくり返されます。
すると今ここにいられず、いつも過去とたたかうことに。
心は疲れ、人間関係も苦しくなっていきます。
けれど、ここで少し見方を変えてみましょう。
実は「治そう」と思えば思うほど、感情はかえって傷ついてしまうのです。
「なおさなきゃ」と思った瞬間、感情は「だめなもの」にされてしまうんです。
わたしたちが誰かに「そのままではいけない」と言われて傷つくように、感情のからだも同じように痛みます。
キーワードは「統合」——治すより、迎え入れる
では、どうすればいいのでしょう。
答えはやさしいです。
・感じをまるごと抱きしめる。
・変えようとしない。
・説得しない。
・良い悪いで裁かない。
・ただ、そばにいる。
これをここでは「統合」と呼びます。
20分の静かな練習
1日20分、または強い反応が出たときに、静かな場所で次をためしてください。
-
楽な姿勢で座り、鼻から吸って鼻から吐く。息と息のあいだに余計な間をつくらず、ゆるやかに続けます。
-
体の感覚に注意を向けます。胸のつかえ、のどのつまる感じ、みぞおちの重さ。逃げずに、その場所に居続けてください。
-
心の中でそっと唱えます。
「いま、あなたといっしょにいます」
この「あなた」は、あなたの感じに向けた言葉です。
感じは、向き合うほど一時的に強くなることがありますが大丈夫です。
それは、奥にしまいこんでいた思いが表に出て、ようやく癒されようとしている合図なのです。
3つのやさしい問い
十分に寄りそえたら、自然な流れで次の問いを投げます。
答えは探しに行かず、流れてくるのを許すだけにしてください。
-
いま、わたしは何を感じている?(言葉にしてあげる)
-
同じ感じを、最後に味わったのはいつ?
-
初めてこの感じを味わったのは、いつ?(幼いころの断片、言葉のないイメージでもOK)
何も浮かばなくても心配しないでください。
意味づけがいらないときもあります。
感じの層は、言葉よりも安心を先に求めるからです。
インナーチャイルドと出会う
もし思い出の中に、小さな頃の自分が出てきたら、その子に「もう一度やり直すチャンス」をあげるように想像してみてください。
たとえば、泣いている子を抱きしめてあげる。
毛布で包んであげる。
安心できる大人をそばに呼んであげる。
「大丈夫だよ」とやさしく説明してあげる。
方法は自由です。
あなたの心が自然に思いついたやり方で大丈夫。
これは逃げることでも、ごまかすことでもありません。
むしろ、あなたの心の中に「新しい選択肢」をそっと刻み込む大切な時間なのです。
傷つきと埋め合わせ
人は、ある部分で深く傷つくと、別の部分でその穴を埋めようとします。
感情を押し込めて、外では「平気な顔」をする。
心の痛みを抱えたまま、体だけを鍛えて強く見せる。
あるいは、感情を置き去りにして、スピリチュアルな世界にのめりこむ。
こうした「埋め合わせ」は、決して悪いことではありません。
それは生き延びるために必要だった知恵でもあります。
けれど、それが続くと、内側に「分離」が生まれてしまいます。
本当はひとつのいのちが、バラバラになってしまうのです。
だからこそ、埋め合わせではなく——
置き去りにした「感情の層」にも、あたたかい居場所をつくってあげることが大切なのです。
よくあるつまずきに、そっと灯りを
-
「うまくできない」
うまくやる必要はありません。深呼吸して、いまここに戻るだけで充分です。 -
「つらすぎて座っていられない」
感じの強さを1〜10で測り、3〜4あたりで、強さを確かめながら少しずつ向き合ってみてください。手を胸に当て、体温を感じながら自分を確かめてください。 -
「ポジティブな感情の方がむしろこわい」
それも自然です。よろこびに触れるのが怖い心もいます。私も戸惑うことがあります。やさしく、少しずつ慣らしていきましょう。
いまこの瞬間に還る
呼吸が切れると、心は過去に引き戻されやすくなります。
連なる呼吸は、意識を現在へとつなぐ細い糸。
気づいたら、また吸って、また吐く。
飾りのないこのくり返しが、「いまここ」の小さな橋になります。
ことばにすると、やさしくなる
練習のあと、短いメモを書くのもおすすめです。
「胸が固くなった。『いま一緒にいるよ』と言い続けたら、少し温かくなった」——それだけで十分。
言葉にすることで、感情のからだは「わたしを見てくれた」と安心します。
おわりに:共感 → 気づき → 希望へ
共感:つらい感情は、悪いものではありません。
それは、あなたを守ろうとしてくれたサインです。
気づき:「治そう」とすると感情は傷つきます。
でも、「そのままでいいよ」と迎え入れると、心は静かにほどけていきます。
希望:今日できることは、ほんの小さなこと。
静かな場所で、呼吸とともに「いま、あなたといっしょにいるよ」と伝えるだけ。
それだけで、あなたの中では分かれていたものがひとつに戻る動きが始まります。
忘れないでください。
あなたは、欠けているから愛されないのではなく、欠けも含めて愛そのものなのです。
静かな呼吸の中で、感情と手をつなぎながら、今日もやさしく歩んでいきましょう。