わたしたちは誰しも、人に強く惹かれる瞬間を知っています。
胸が震え、時間が止まったように感じる。
けれどその奥には、甘やかな高揚と、切ない痛みが同時に流れています。
惹かれる気持ちは、とても神秘的なものです。
光と影の両面を持ちながら、わたしたちをどこかへ導こうとする力。
その正体を静かに見つめていきましょう。
惹かれる気持ちは、コインの両面
惹かれるという感情は、一枚のコインのように、幸せな喜びと苦しい渇望をあわせ持っています。
そして、私たちは「感謝」「惹かれる」「愛する」を、しばしば同じものと考えてしまいます。
けれど本当は、それぞれ違う状態なのです。
感謝とは、存在の価値を見つけ、そこに光を当てること。
惹かれるとは、引き寄せられる磁力のようなもの。
そして愛とは、相手を自分の一部として抱きしめる「意識的な選択」です。
「惹かれる」とは、“欲求の引力”
惹かれる感覚は、心の奥にある「欲求」が生み出す引力です。
好み → 欲しい → 必要 → 渇望へと段階を進めるほど、わたしたちは「まだ持っていないもの」を強く求めています。
多くの場合、それは相手そのものではなく、その人を通じて手に入れられるはずの体験や感覚。
安心や承認、自由や誇り……それらに惹かれているのです。
だからこそ大切なのは、こう問いかけること。
「わたしは本当は、何を求めて惹かれているのだろう?」
小さな物語たち
ある女性は、豊かで力を持つ男性に強く惹かれました。
彼といると守られ、誇らしく、自分の価値が高まるように感じます。
けれど彼女が望んでいたのは、本当は「安全」と「安心」と「自信」でした。
彼そのものではなく、彼を通して得られるものだったのです。
気づいた彼女は、その願いを別の方法で満たす選択をしました。
また、ある男性は、野心的で情熱的な女性に惹かれました。
彼女は、彼が避けてきた自分自身の姿を映す鏡のような存在でした。
惹かれるほどに衝突が増え、やがて彼は気づきます。
「これは母への想いを癒そうとする心の叫びだったのだ」と。
そして、自らの野心や感情を受け入れ直し、別の未来を選びました。
一方で、別の男性は安定した誠実な女性に惹かれました。
そこには彼自身の望みと同じ願いがありました。
ふたりは互いの道を重ねることを選び、今も穏やかな愛を育んでいます。
投影という幻
惹かれるとき、私たちはつい「意味づけ」をします。
「これは運命だ」「宇宙のサインだ」。
そして、自分の理想の物語を相手に重ね、役を与えてしまうのです。
けれど本当に見ているのは「その人」ではなく「役柄」。
相手が役を外れると、批判や不満が生まれます。
ここで立ち止まり、問いかけてみましょう。
「いま、私は相手をそのままの姿で見ているだろうか?」
失くした自分を思い出すために
惹かれる気持ちは、ときに「置き去りにした自分」を映します。
幼い頃に切り離した弱さや願い。
それが相手の姿を借りて現れるのです。
だから近づくほど、痛みがよみがえり、拒絶したくなることもあるでしょう。
けれどそれは、統合への招きです。
「彼(彼女)のその部分を受け入れることは、わたしの失われた部分を迎え入れること」。
そう気づくと、苦しみはやわらぎ、心は静けさに変わっていきます。
身体の声もまた真実
「惹かれる」には、心だけでなく身体の欲求も関わっています。
フェロモンや外見に強く惹かれることも自然なこと。
けれどそれと、日々をともにできる相性は、別のものです。
もし誰かに強く惹かれて盲目になりそうなら、ひとつ遊んでみてください。
その人を想像の中で「もっと地味に」してみるのです。
声も消して、行動だけを見つめてみる。
そこに優しさや誠実さが残るかどうか。
答えは、そのときに見えてきます。
欲求を否定せず、光に変える
惹かれる気持ちを「流されるな」と言われると、「望みを捨てなさい」と聞こえるかもしれません。
けれど宇宙は、あなたの願いを否定してはいません。
むしろ「それをもっと意識的に叶えなさい」と語りかけているのです。
だからこそ、自分にたずねましょう。
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わたしが本当に欲しいものは何か?
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それはこの人とでしか手に入らないのか?
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この人を役ではなく、人として愛せているか?
愛とは選択。相手の幸せを自分の一部とする選択です。
惹かれる気持ちや感謝は、その選択をやさしく後押ししてくれるものなのです。
静かな結び
惹かれる心の高鳴りは、時に人生を揺さぶります。
けれど目覚めの道を歩くほど、それは「欠けた自分を統合する合図」へと変わっていきます。
本当に心地よい関係は、激しい鼓動よりも、深い呼吸のような安らぎをくれます。
「帰ってきた」と思える静かな場所。
そこにこそ、愛は根を下ろすのです。
どうか今日も、自分の願いに耳を澄ませてください。
惹かれる気持ちを責めるのではなく、光への道しるべとして使っていきましょう。